肩こり、腰痛時に使われる貼付薬(貼り薬)について

前回のブログで塗布薬(塗り薬)について書きました。今回は、薬局に行くと塗り薬と同様さまざまな種類がある貼付薬(貼り薬、いわゆる湿布)についてみていきます。

貼付薬の種類

貼付(ちょうふ)薬とは、多くの場合「湿布」と呼んでいるものです。しかし貼付薬にも種類があり、「湿布」はその中の一部です。

大きくは「パップ剤」と「プラスター剤」の二種類に分けられます。

種類を違えて使ったところで害はないですが、せっかくならそれぞれの特徴を活かして有効に使いたいですね。

パップ剤

「湿布」とは、パップ剤のことと思っていただければいいでしょう。

肌に触れる面の主な材料は水分を多く含んだジェル状物質です。多くの場合このジェルは水とグリセリンの混合物からできています。さらに消炎鎮痛効果のある薬剤を混ぜることで消炎鎮痛効果のあるパップ剤になります。

ジェルには水分が多く含まれているので自然と皮膚温が下がります。皮膚温が下がる感覚(冷感)を高めるためにメントールやカンフルといった精油成分も加えられます。ジェルに多くの水分が含まれているので、比較的肌に優しいといえます。

欠点は剥がれやすいことで、動きの大きい関節部分に貼るためには工夫が必要です。

プラスター剤

プラスター剤の場合、肌に触れる部分は薬効成分と粘着剤を混ぜ合わせたものだけで、水分はありません。水分がないために患部の保温性が高く、冷たい感触が苦手な人にも適しています。

布のような生地のパップ剤に比べてプラスター剤の生地は伸縮性の高いフィルムでできているので、薄くて軽く、よく動く関節部分に貼ってもなかなか剥がれません。

反面、薬剤の浸透率がパップ剤よりもやや低いようです。

貼付薬の薬効成分

サリチル酸メチルという薬剤がかつてはよく利用されていました。よく言われる「湿布臭い」臭いの元はこのサリチル酸メチルです。ただ、現在はこのサリチル酸メチルを使った貼付薬は少なく、代わって主流になっているのが、インドメタシンやフェルビナク、ロキソプロフェンという薬剤です。これらの薬は非ステロイド性消炎鎮痛薬というグループに含まれます。

非ステロイド性消炎鎮痛薬は痛み止めの内服薬にも使われ市販されています。

パップ剤とプラスター剤の使い分け

パップ剤とプラスター剤のどちらを使うのが適当なのかは、皮膚温を下げる効果(冷感)の要不要で判断できると思います。

では、皮膚温を下げる効果が必要なのか不要なのかは、どう判断すればいいのでしょうか?それは消したい痛みが炎症性の痛みなのか、非炎症性の痛みかを見分けることです。

炎症による痛みは、ある時を境に、大きな痛みが一気に襲ってくるものです。

炎症には五大兆候というものが存在します。疼痛(痛み)・発赤・腫脹・熱感・機能障害の5つです。扁桃炎、関節炎など言われる炎症は大きな痛みと共に、赤く腫れ上がったり、少し火照っていたりします。

非炎症性の痛みは、数時間から数日の時間をかけてじわじわと痛みが強くなってくるものです。腫れ上がったり火照ったりはありません。炎症性の痛みのように痛みのせいでできていたことができなくなること(機能障害)もありません。

一気に来た痛みで、しかも火照っていたり、痛みのせいで動けない・動かせないという時、この時はパップ剤を使うのが効果的になります。

時間をかけて強くなってきた痛みで、それ以外は気になる症状がないという時、この時はプラスター剤を使うのが効果的になります。

非ステロイド性消炎鎮痛薬について

この薬は多用すると、とりわけ慢性の内臓疾患をお持ちの方に、副作用が現れる心配があります。貼るときに冷感もなく関節等にもぴったり貼れるということで重宝し、用心のつもりで頻繁に貼り替えるような使い方は控えた方が良さそうです。

冷感を強めるメントールやカンフルが含まれているか、薬剤はサリチル酸メチルなのか非ステロイド性消炎鎮痛薬なのか、全てはパッケージに記載されていますので一度目を通しておきましょう。

肩こりや腰痛に貼付薬を使う

肩こり

肩こりは、多くの場合長時間同一作業を続けることで感じ始めるものだと思います。朝方は大丈夫だったのに夕方には痛い。また、月曜日は大丈夫だったのに木曜日、金曜日には辛くて痛い、など。ある程度の期間で強まった痛みに冷却は不必要です。プラスター剤の方を使いましょう。幸い肩や首周辺は皮膚の動きも大きいですが、プラスター剤はそんな場所でも剥がれにくいです。

肩こりとは違いますが、寝違えは寝起きに一気に襲われる痛みです。顔を回すことさえできなくなります。この時は皮膚温を下げる効果もあるパップ剤の方がいいでしょう。

腰痛

いわゆるギックリ腰は突然に襲ってきて、全く動けなくなってしまいますね。腰の筋肉は量が多くて強力です。氷嚢で冷やしてもいいぐらいですが、パップ剤を貼りましょう。

長時間ドライブの後や演劇鑑賞後、ソファーから立ち上がる時に「痛たたたぁ〜」と言いながら体を起こせる腰痛はギックリ腰ではなく、長時間同一姿勢のために生じた腰の痛みです。これが取れにくい時や頻繁に感じる時はプラスター剤を貼ってみましょう。

最後に

段階的にジワジワと強さが増した痛みであればプラスター剤、瞬間にズキン!と来た痛みであればパップ剤を貼るようにすれば、より効果的に痛みを和らげることができます。